経営者教育 プレゼンテーション能力の開発
食品メーカー、従業員約400名、51歳、男性、代表取締役

◆総務部長からの相談
ある食品メーカーの総務部長から社長のプレゼンテーション・スキルの相談を受けた。
次の内容だった。

  ・上場企業なので、最近は定期的に投資家に対して決算内容や今後の方針を説明
   している。
  ・社長が中心となって説明するわけだが、社長の話し方にインパクトが弱い。
  ・また、ロジカルな説明は苦手で、説明しだすと回りくどくなり要点がわかりにくい。
  ・そのうちに本人も混乱してくることが多い。

  ・また、最近は食品関連企業の不祥事が相次いでいるが、当社の社長の
   プレゼン能力では、そういうピンチに対応できず、下手をすれば会社存亡の危機に
   なりかねない。

  ・社長は、誠実で温かく、フランクな人柄が社内から信望を得ている。
  ・また、直感的だが、その直感がことごとく当たってきた。
  ・そして、創業10年余りで株式の上場に至った。

  ・こういうプレゼンをしていると、投資家からは経営者としての能力を疑われて
   しまうことは本人も自覚している。
  ・過去にプレゼンテーション・セミナーに行ったこともあるが、あまり改善しなかった。
  ・なんとか良い方法はないか

という相談だった。

◆観察
投資家への説明会のビデオを見せてもらった。総務部長の話の通り、回りくどくなり要点が
わかりにくい。
結論を先に言わないからだが、わかっていてもできないらしい。
社長の長所である誠実でフランクな人柄が表れていない。
これではもったいないという印象だった。

また、作っているPowerPointの資料にも問題があった。
総務部で作ったらしいが、ロジックの構成がきちんとできていない。
これは、総務部にロジカルなプレゼンテーションの組み立てを研修することと、
できあがった資料を事前に私たちがチェックすれば対応できる。

◆個人レッスン 1回目 気持ちの安定
さっそく、社長と個人レッスンをすることになった。
目を閉じて、プレゼンしているところを思い出してもらった。
すると、社長の首や肩に緊張がみられ、表情も固くなる反応が起きた。
これと同じ反応がプレゼンのビデオの中でも起きていた。
この反応が起きなくなれば、プレゼン中の緊張が緩和され、リラックスできるようになる。

緊張緩和をもたらす中和テクニック
中和はNLPのテクニックで、緊張するパターンを簡単に変化させられる。
緊張するのは何かの条件反射があるからで、新しくリラックスする条件反射を作り出し、
緊張の条件反射とつなぐことで、過度に緊張することがなくなる。

もう一度、プレゼンしているところを想像してもらった。
今度は穏やかな表情で、首や肩に緊張がみられない。反応パターンが変わった証拠である。


◆個人レッスン 2回目 プレゼンテーションのスキル・トレーニング

気持ちをこめて人前で話す練習を繰り返した。
テーマは、ビジョンを語る、社員を動機づける話、一番悲しかった体験、私の生き様。
それぞれのテーマごとに感情の込め方が異なる。


この練習で、ずいぶんと話にインパクトをつけられるようになった。
以前のように、ロジックに逃げるのではなく、人間としての素直な気持ちを相手に
伝えることができてきた。私たちも彼の話の内容、そして彼の成長に感動した一日だった。


◆練習会

1カ月後に予定されている決算説明会に備え、練習会を開いた。
会場では、証券会社や銀行に勤務している知人に参加してもらい、
即席の投資家をそろえた。そして、シビアな質問、嫌みな質問を繰り返した。
社長は、ところどころでイライラしたり、萎縮する反応があった。

こうした反応も条件づけられたパターンである。
そこで、別室に入ってNLPの中和テクニックを使ってパターンを取り除いた。
会場での練習と別室でのセラピーを何度か繰り返すと、かなり嫌みな質問を受けても、
落ち着いて対応できるようになってきた。

結論を先に言う話し方はなかなか慣れなかった。
そこで、RPI法を使って結論を先に言うときのストレスを取り除いた。

◆その後の変化・成果

総務部長の話
「本番は従来にない成功だった。社長は落ち着いていた。
社長がいつものフランクさが出ていた。投資家からのネガティブな質問にも
ジョークで切り返した上で、ロジカルな説明をした。

欲を言えば、話がもう少し短ければもっとよい。
しかし、短期間にこれだけの変化が起きたと思う。

我々も努力のし甲斐があり、なによりも社長が熱心に取り組んでくれたことが
思い出された。そして、目頭が熱くなるぐらいうれしくなった。
また、社内の会議でもわかりやすく指示を出すようになった。
社長が一回り大きくなられたようだ。」