経営幹部・管理者の問題解決、能力開発 
プレッシャーで苦しむ緊張症の若手管理者
機械メーカー、営業課長、34歳、北川和也(仮名)

◆当初の状態

北川さんは2カ月前に親会社から転籍してきた。機械設計の技術者として実績を残してきたが、畑違いの営業に配属となった。
技術屋らしく、まじめにコツコツと仕事をする人である。ただ、おとなしくて口べたである。本人は、自分がどうして営業に配属されたのかわからないという。

部下は5人いる。しかも、年上のベテランの部下が2人いる。51歳、47歳と北川さんよりも一回り以上も上で、長年の営業経験がある。得意先と深い人間関係を築いている。いわゆる個人商店型の営業をしている。
営業の経験がない北川さんにとって、使いにくい部下である。

社長から北川さんを一人前の営業課長にしてくれと相談をいただいた。社長も、親会社から転籍してきた社員だけに、心配しているようだ。

私は営業会議に同席した。北川さんは先月の実績と今月の対策を説明した。かなり緊張している。右肩が上がり、声は小さくて震えていた。呼吸が浅い。苦しそうに話している。質問されると、「あ、・・・その・・・」という感じで、まともな受け答えができていない。これではリーダーシップの発揮など、とてもできそうにない。

◆面接 1回目

会議後に面接をした。口が重そうなので、心理テストの1つであるエゴグラムをしてもらった。

当初のエゴグラム

NP(保護的親)とAC(順応の子ども)が高くなっている。他人に合わせて自分の感情を抑えている状態といえる。そうしたフィードバックをすると、重たかった口が徐々に開いていった。

ていねいに話を聞いていくと、強いプレッシャーを感じていることを話し出した。
年上の部下との人間関係。得意先との信頼関係ができていない。営業の経験もない。親会社から来たので実績を上げなくてはという思い。ここで成果が上がらなければ、重要な仕事を任されないかもしれない。自分の将来が心配。このような話を延々と続けた。今まで誰にも言えなくて、1人でプレッシャーを背負っていたのが、ようやく言えたという感じだった。

身体の状態を聞くと、肩こりがひどく、最近は不眠気味という。肩こりは責任感が重荷になっているときに起きやすい。そして、柔軟性をなくしている状態ともいえる。行動がワンパターン化してくる。年上の部下に対して、ワンパターンのように気を遣いすぎていることだろう。不眠気味なのは切り替えがうまくできていないといえる。

大切なことは、本人なりに一生懸命にやっているから肩こりや不眠の症状が出ていることである。本人にはやる気もエネルギーもある。したがって、リラックスが適度にできるようになればいい。

会議中に起きる緊張パターンを緩和

会議中の説明で繰り返し起きる過度の緊張を緩和するために、NLPの中和テクニックを使って会議中でも適度にリラックスできるようにした。


◆面接 2回目

今回も会議に参加し、様子を確認した上で面接をした。会議では前回よりは落ち着いていた。しかし、まだ少し固さがある。

肩こりの緩和による柔軟性開発

プレッシャーを日常的に感じ、気持ちを切り替えられていないときは肩こりになりやすい。そして、柔軟な発想もできない。行動がワンパターン化してくる。たとえば、年上の部下に対して、ワンパターンのように気を遣いすぎる。一時的にプレッシャーを感じても、気持ちが切り替えられたら肩こりにはならない。

したがって、肩こりを軽くすれば気持ちを切り替えられ、柔軟性が高まり、年上の部下にも適切な対応が可能になる。肩こりの緩和が、行動パターンが変わり、リーダーシップ力の向上につながる。

そこで、首と肩の筋肉の慢性的な緊張をRPI法で緩和した。マッサージ等でほぐすことは可能だが、効果は一時的になりやすい。心理的なアプローチであるRPI法だと、ほぐれた状態が継続する。

面接の終盤では、呼吸が深くなり、声がやわらかく響くようになった。余裕が出てきたことが伺える。次回までにどんな行動変容が起きているか楽しみである。

◆面接 3回目

いつものように営業会議に参加した。前回と比べてもかなり余裕がでてきたようだ。ときおり笑顔を見せながら説明している。
かなりリラックスできるようになってきたようだ。次はこの状態をより促進させ、定着させることである。

精神的な安定感、落ち着きを強化

下半身の筋肉の慢性的緊張をゆるめていった。下半身の筋肉が緩むと、気持ちが落ち着いて安定してくる。人間的な“器”が大きくなるように感じる。

年上の部下を使うには、落ち着きや安定感が大切である。力で引っ張ろうとすると反発されやすい。北川さんのようにおとなしい上司がベテランの部下に反発されると本当に苦労する。だから、年上の部下よりも、落ち着きや安定感で数段上回るとよい。ソフトで自然なリーダーシップを発揮できる。落ち着いていて安定感がある上司には、なぜか人がついてくるのである

下半身の筋肉の緊張をほぐした後は、声が低くなり、話すスピードが少し遅くなった。一言一言を自分の内側に確かめるように話し、ことばに重みが出てきたように感じる。自然で、確かな変化が起きている。

◆職場での変化
エゴグラムの変化

3回目の面接が済んで1週間後にエゴグラムをした。FC(自由な子ども)やA(大人)、CP(批判的な親)が適度に高くなり、AC(順応の子ども)が低くなった。自分を抑圧する傾向が少なくなり、適度に自己主張をするようになったこと、論理的に判断する余裕ができたことが伺える。

社長の話

「年上の部下ともそつなくコミュニケーションをしている。そして、従来の当社にはなかったようなロジカルな戦略分析をして注目している。最初は心配したが、彼の持ち味がうまく出てきたように思う。」

年上の部下A氏の話

「北川課長が来たときは、頼りなさそうに思ったけれど、私たちの話をよく聞いてくれて、本当に一生懸命にやってくれる。年下の上司だけど、彼なら納得できる。私はマネジメントは得意じゃないしね」

その後のフォローと変化

その後、半年に一度程度、継続的に面接をした。毎回、「たいへんですわ」ということばから始まるが、そのときの顔が回を追うごとに余裕が出てきたと感じる。
そして、2年後に北川課長は次長になった。社内で最も若い次長である。